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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

恐竜のはなし

ウィリアム・スウィントン ぶん
バリー・ドリスコル え
鹿間時夫 やく
福音館書店 1968年7月15日 第2刷

恐竜のはなし
イラスト:あみあきひこ

カラーではない
表紙にはステゴザウルスが黒を背景にモノトーン風に描かれています。
横長の絵本といった装丁なのですが「福音館の科学シリーズ7」として出版された本だけあってものすごく真面目な感じを漂わせています。本の中で紹介される恐竜の絵にも色はついてなく、こうした本に欠かすことのできない存在であるティラノサウルスも出てこないなど、「恐竜なぜなに大百科」的なうわついた部分が全然ありません。
一応小学校初級から小学校中級向きらしいのですが、文字は小さく、書かれている内容からすれば高学年向きと言ってもいいでしょう。恐竜の定義が「陸棲の直立歩行する爬虫類」であることを踏まえてプレシオザウルスやプテラノドンが恐竜ではなく「海のはちゅうるい」「空のはちゅうるい」として紹介されている点を見ても、考証のきちんとした本だということがわかります。


色のついたページ

買ってもらったのは幼稚園の頃だったので内容はあまり理解できず、絵をながめるだけでした。全体の雰囲気がちょっと怖い本だったという印象があります。

ポラカンタスとステゴザウルスは、水べのやわらかい植物をたべるのがすきでした。しかし、すべって水の中におちてしまったときには、重いよろいのために、もぐってしまいました。みずからでることができずに、そのまましずんで、おぼれてしまうこともありました。

このような解説のおかげでなんとなく気が滅入ったことも覚えています。怪獣ならば架空の世界のものとして、たとえウルトラマンにまっぷたつにされようとも楽しめました。しかし「恐竜のはなし」はかつてこんな生物が存在したのだという事実をきちんと示し、それが命を持った存在であったということを強く意識させます。溺れ死ぬとか言われれば嫌な気分にもなりましょう。

最初のページに現在のはちゅう類として「ワニとワニのあかちゃん、トカゲ、カメ、それにヘビ」の絵が出ているのですが、私の手によってワニは緑色に、トカゲは茶色に、ワニの卵はピンク色に塗られています。
色がついていなくてつまらないと思ったのか、怖い雰囲気を和らげたいと思ったのか、その動機は不明ですが塗らずにはいられないという衝動にかられたようです。カラーサインペンを使った塗りはかなり雑で、塗ってはみたもののその出来栄えに我ながらがっかりしたこと、それと同時に親に見つかったら怒られるとびくびくした記憶が蘇ってきました。


イグアノドンとブロントサウルス
イグアノドンについて知っていること。
・初めて発見された恐竜の化石である
・何頭もの化石が一度に発見されたことがあるが、おそらく肉食恐竜に追われて崖から落ちたものと思われる
・前足の親指の骨は最初鼻先の角だと勘違いされていた
こうした情報は「恐竜のはなし」で得たものだと思っていたのですが、本書には最初に発見された化石であること以外は書かれていませんでした。だとすると、この知識は何の本で仕入れたのか、気になるところです。

研究が進むことによって恐竜の常識も変わってきます。昔は恐竜に体毛があった可能性に言及しているような本などありませんでした。またブロントサウルスという恐竜ひとつとっても、私世代にとっては水辺の巨大な草食恐竜の代表格なのに、実際には存在しなかったと図鑑から消えたり、最近になって本当はいましたという論文が発表されたりといろいろ忙しいです。
日々変化する情報の中、1967年初版のこの本が絶版なのは仕方ないことかもしれませんが、図書館で借りられる可能性は高そうです。

(2017.5.2更新)

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