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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

世界びっくり情報

文・笠原 秀
学習研究社 昭和48年12月20日初版発行
昭和50年2月1日第4刷発行 定価450円

世界びっくり情報
イラスト:あみあきひこ

ジュニアチャンピオンコース
表紙には炎に包まれた壁をジャンプして突っ切るモーターボートのスタントショーとそれを見てびっくりしているような少年の写真が使われています。
学研ジュニアチャンピオンコースというシリーズの中の一冊で、他にも「ONの野球コーチ」「あなたは名探偵」「ジュニアクッキング」といった小学生心をくすぐる作品が揃っています。ちなみに当時の小学生男子のほとんどが「ON」と表記されていればそれが読売ジャイアンツの王・長嶋選手であると理解できました。
巻末に〈お願い〉として

体裁・内容の似かよった本が出回っていますので、お求めのときは、チャンピオンコースの本かどうか、確かめてから買いましょう。

と書かれていることからも、たくさんの類似品が出ていたことがわかります。
この頃は子供の雑学への欲求を満たさんとするこうした書籍が華やかで、ジュニアチャンピオンコース以外では小学館の入門百科シリーズが有名どころでした。


ジョイス婦人

「世界びっくり情報」は七つの章に分かれていて「世界一のノッポ少女」「断食記録112日間」といった人間びっくり情報から「世界一小さい銃、大きいくつ」「犬にかみついた男」といった珍品・珍事件びっくり情報まで、子供の食いつきがよさそうな話題が広く、浅くこれでもかと掲載されています。
前書きにも書かれていることですが、海外ネタの元になっているのは1971年に竹内書店から発行されたノリス&ロス・マクワーター著「記録の百科事典」という本、日本ネタの元になっているのは新聞各社の記事だそうです。雑多な情報をカテゴリー別に整理しているあたり、ちょうど今で言う所のまとめサイトみたいなものだと思ってもらうのがわかりやすいかもしれません。
図書室にあるような本ではありませんがマンガでもないので、学校に持って行ってもおとがめはありませんでした。休み時間に友達とワイワイ眺めるのにちょうどいい本だったと思います。

印象に残っていた記事のひとつに「ちび人間No.1 ジョイス婦人」があります。
身長74cm、体重4.5kgというイギリスのジョイス=カーペンターさんを紹介したもので、添えられた写真を見て女の子たちが「怖い、怖い」と騒いでいたのを覚えています。三頭身くらいにみえるジョイス婦人の写真には確かに見る者を不安にさせる雰囲気がありました。女子の手前なんでもない風を装っていましたけれども。

世界一、世界初、日本一的な記事が中心ではありますが、びっくりする情報ならなんでもOKなのでベタ記事的なものもちょくちょく出てきます。

犬がナイフを食べた
アメリカのベンジャミンさんがサンドイッチを作っていたところ、飼い犬のクラウドが、長さ三十センチのナイフをぱくり。よく飲みこめたものだ。


途中で飽きる
とにかく情報量の多い本です。当然そのすべてに興味を引かれるわけではなく、読んでいるうちに飽きてきてしまったのは昔も今も変わりませんでした。
世界の面白ネタはいつの時代にもニーズがあります。80年代になるとテレビが「なるほど!ザ・ワールド」「世界まるごとHOWマッチ」といった番組を提供して人気を博しました。
小学生の時に惹きつけられたのは結局、双子プロレスラーのマクガイア兄弟や顔の長さを半分に縮めることのできるクシャおじさんの記事でした。それは「テレビで観て知っている人がこの本にも出ている!」という嬉しさみたいな感情だったように思います。既にテレビが大きな影響力を持っていたことがわかります。

そのテレビもネット動画にその座を脅かされる今、これから先「世界びっくり情報」のような「本」が子どもを喜ばせる可能性は低そうです。

(2017.6.7更新)

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