サイト名

昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

まだらの紐

コナン=ドイル 原作
野田開作 訳
カバー絵・口絵 西村保史郎
挿絵 山本燿也
偕成社 昭和46年5月10日発行 290円

まだらの紐
イラスト:あみあきひこ

まったく記憶にない
名探偵ホームズ全集22巻の第2巻です。裏表紙にはロンドンの地図。そこにステッキを持ちバイプをくゆらすホームズの立ち姿が格好良く描かれています。図書室ではポプラ社の少年探偵シリーズと並ぶ人気作だったので全巻読破したという昭和時代の小学生も多いことと思います。
自分も何冊かは読んだのですが、それほどはまりませんでした。登場人物が大人ばかりで感情移入しにくかったからかもしれません。
この本には表題作以外に「ボスコム谷の惨劇」と「悪魔の足」という2話が収録されています。内容を覚えていたのは「まだらの紐」だけで、残る2作品についてはどんなお話だったのか記憶にありませんでした。「ボスコム谷の惨劇」は中学生の時に読んだ新潮文庫版「シャーロック・ホームズの冒険」にも収録されているので少なくとも2回は読んでいるはずなのに、結末もなにも頭から消えていました。
脳みその衰え具合にやれやれと思いつつ、同じ作品を新鮮な気持ちで読めると思えばそれはそれでお得とポジっておくことにします。


日常系四コマ
小説としてホームズ物を読んだのはこのシリーズが初めてだったものの、この世界的に有名な探偵の存在はもちろん知っていました。漫画やテレビなどから知識が入っていたのでしょう。ちなみに「まだらの紐」のトリックやその正体についてもなぜか本を読む前から知っていました。
3作品を読み返してみると、依頼者の妹が死んだのと同時に二人の兄弟が発狂してしまうというおどろおどろしい事件から幕が開く「悪魔の足」が一番面白く感じました。
全体的にホームズの変人描写が薄く、頼もしい名探偵としての面が強調されている印象なのは子ども向けにリライトされているからでしょう。「まだらの紐」などはところどころでなんとなくほのぼのしていて、なにやら日常系四コマ漫画っぽくもあります。
例えば冒頭部分の描写はこんな感じです。

ふたりは、ロンドンのベーカー街にあるハドスン家のひとへやをかりて、仲よく、たのしいまい日をすごしていた。

そして事件解決後の締めの部分は次のようになっています。

「ぼくは、ねるまえに一仕事ある。すなわち、このたびの事件のことを、すっかりくわしく、ノートに書きとめてしまうことさ。」
とワトスンはいったが、つい、パンが丸ごとはいりそうな大口をあけて、あくびをした。つられてホームズも、大あくび。
……ふたりは、おかしそうに笑いあった。


重箱の隅
また、どうでもいいことなのですが、191ページ「悪魔の足」の中に

ホームズは、ここで、首をあごにうずめ、じっと、もの思いにふけった。

という一文が出てきます。首とあごが逆なんじゃないかと思いつつ、でも「あごを首に埋める」という表現もあんまりしないよな、と。言わんとしていることはわかるんですけれどね。

(2017.10.1更新)

»ひとつ前の感想文を見る

ページのトップへ戻る
inserted by FC2 system