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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

ハルとロジャーの冒険大作戦 2

ゴリラの逆襲

ウイラード・プライス 著
久米みのる 訳
中山正美 さし絵
集英社 昭和48年11月 初版 450円

ゴリラの逆襲
イラスト:あみあきひこ

復讐に燃える
野生動物を生け捕りにして動物園などに供給する兄弟の活躍を描くシリーズの2巻目です。
今回ハルとロジャーがマウンテンゴリラの生け捕りを目的としてやってきたアフリカのコンゴには野生動物以上に危険といえる密猟者たちがうごめいていました。
密猟者の手口は幼いゴリラを捕らえるために大人のゴリラを群れごと殺してしまう残忍なもの。通報されることを恐れたギャングたちは兄弟を邪魔者として始末しようとします。更には家族が殺されたことをハルたちの仕業と思い込んだ一頭の巨大なオスゴリラも命を狙ってきます。
果たして密猟を防ぐことはできるのか、そしてゴリラの復讐は果たされるのか、というのが今回のメインストーリーです。
作中密猟者によって60頭ものゴリラが殺されたりはするものの「魔境アマゾン」のように野生動物があっさり殺される描写はほとんどありません。この作品が発表された1969年には野生動物保護の声もずいぶん大きくなっていたのでしょう。お話の中で麻酔銃も普通に使われるようになっています。


重箱の隅
今読んでみると面白く思える点を発見できるのもこのシリーズを読み返す楽しみの一つです。

ハルとロジャーが拠点としている小屋が火事に見舞われた時、3頭の野生のゾウが消火活動を行います。

長い鼻から水を吹きだし、火にかけていた。
ゾウは野火を非常にきらい、草が燃えていると、この方法でたんねんに消す習性がある。

本当にそんな習性があるとしても、このお話のように人間の小屋と近くの湖をせっせと往復して消火活動に当たるということはまずないかと思います。

生け捕りにしたゴリラやチンパンジーの物分りが良すぎるのも面白かったです。類人猿の知能の高さを示したかったのでしょうが、その振る舞いが幼い頃から人間に育てられたり、調教されてきた個体のそれになっています。昔のハリウッド映画にマスコットとして出てきたお猿さんみたいな描かれ方というと分かりやすいかもしれません。
もっとも野生動物がそうそうフレンドリーになることなどあるまいというのは大人になった今の考え方。当時は誠意をもって接すれば類人猿ほど頭の良い動物ならばすぐに打ち解けられると思ったものです。


植え付けられた知識
数十年経過した現在も脳容量の一部を占めている「ゴリラの逆襲」から得られた知識は次の通りです。

◆ゴリラにはマウンテンゴリラとローランドゴリラの2種類がある。

◆マウンテンゴリラのオスの背中にはシルバーバックと呼ばれる銀色の筋がある。

◆食事をしない動物に無理やりエサを与えるボーリング・ガンという道具がある。

◆双頭のヘビを捕まえた時は弾力のあるテープで二つの頭を固定してやると股の部分が裂けない。

◆ヒョウに手を噛みつかれた時の対応。

ヒョウは、相手の手や足が、口から引きぬかれないように、用心している。まさかそれが、ぎゃくの方向へーーーつまり、のどの奥に押しこまれるとは思わない。
そこで、手を引き抜くかわりに喉の奥に押し込めばヒョウを窒息させられる。

◆スピッティング・コブラという相手の目に向かって毒液を飛ばすヘビがいる。毒を目に受けてしまった時はミルクで洗うと良い。

これから先ヒョウに手を噛まれたり、コブラの毒を目に受けたりすることはおそらくないでしょう。この本から得られた知識も宝の持ち腐れとなりそうです。
でも、全然残念ではないです。

(2018.1.11更新)

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