そのかいぶつは、からだじゅう、みどり色がかった、銀色のうろこにおおわれ、ぎんぎんぎらぎら、ひかり、目玉は、火のようにまっかっか。鼻は、なんだか、ワニの鼻のようで、あたまのまん中には、さきっぽにまるい玉のついた、二本のゆらゆらゆれるほそいのがついていました。
おまけに尻尾には小さなジェットエンジンがついていて、背中には小さな羽があり、カウボーイがつけているようなガンベルトまで締めています。
話す言葉の語尾が「だわさ」になる、このヘンテコな怪物はマンガが大好きな子どもの元に現れるという「マンガキチーガイ種族」の一種、ニョゴニョゴでした。ニョゴニョゴはサム君をある時はガンマンや探偵、ある時は宇宙パトロールや遊園地のキャラクターが活躍するマンガ世界の冒険に連れ出します。
この手のお話にしては珍しいことに、サム君はマンガ世界ならではの面白可笑しい出来事にちょっとバカバカしさを感じたりして、冒険を心の底から楽しむ感じではありません。その上ニョゴニョゴがTPO無視で誘ってくるので勉強がおそろかになったり、ちょっとしたことでイライラしたりと日常生活にも影響が出始めます。
そう、ニョゴニョゴの種族名が「マンガキチーガイ」というちょっと悪意を含んだものであることからも分かる通り「サムくんとかいぶつ」はマンガに少々批判的なお話なのです。
「おとうさんとおかあさんは、おまえのぼうけんのことを、しばらくまえからしっていたんだよ。もちろん、ほんとうのことをしっているのは、おまえだけだがな。おとうさんたちがおまえぐらいのときに、やっぱり、かいぶつニョゴニョゴとあそんだものさ。もちろん、おとうさんやおかあさんのつきあったかいぶつニョゴニョゴは、おまえの友だちそっくりだとはおもわんがね。そのいとこかもしれんな。」
そしてお父さんはニョゴニョゴを追い払うために用意した図書館のカードをサム君に渡します。
「おとうさんは、やくそくするぞ。一週間に一どはそれをもって、おまえといっしょに図書館へいって、おまえがほんとうにたのしいとおもう本をさがすのをてつだってあげる。」
すごくいいご両親で、提案する解決策も子どもの読書意欲を伸ばしてあげることでマンガから無理なく卒業させようという文句のつけようのないものです。
さて、なにやら微妙に長いテキストになりそうなので今回は分割することにしました。続きは後編で。