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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

異物混入のお話 その2

異物混入のお話 その2
イラスト:あみあきひこ

ネズミが出るよ
古い映画やドラマを観ていると、今だったら大問題にされるようなことが堂々と行われていることがあり、そのギャップが楽しかったりします。

先日観た吉永小百合主演の「愛と死を見つめて」という映画にもお医者さんが患者さんの目の前でタバコをふかし、病室にネズミが出ても「イヤねぇ」くらいの感じで済まされてしまうといった、今の視点からすると「面白い」シーンがいくつかありました。

ところでネズミといって思い出すのは昔勤めていた会社の近くにあったレストランのことです。美味しく、いつも混んでいる人気店でしたが、時折フロアをネズミがダッシュで横切っていました。
お客さんも慣れたもので、特に騒ぎも起きませんでした。自分たちもそのレストランを仲間内でネズミ屋と呼び、ネズミを見かけると「お、出た!」と顔をほころばせたものです。もちろん料理にネズミが混入するようなことはありませんでした。

あと、ネズミが出てくるようなお店とは言ってもモノクロ映像が似合うほど古い頃のお話ではありません。既に2000年代に入っていた、平成時代のことです。


中華料理店にて

ネズミ屋の近くにはデパートがありました。そこのレストラン街に会社の同僚と昼食をとりに出向いた時のことです。
入ったのは中華料理のお店で、エビチリや麻婆豆腐といったメインのおかずが異なるランチセットを人数分注文しました。みんなでおかずを分けていろいろな味を楽しもうという、中華屋さんではよくやる方法です。
セットにはメインのおかずの他にごはんとスープ、そして小さなせいろがついていました。せいろの内容は蒸しギョウザとシュウマイです。シュウマイの上にはグリーンピースがのっているパターンが多い中、このお店では代わりに黄色いコーンが一粒のっていました。

さて、自分の前に供されたせいろのふたを開けて中を見ると、どうも少し他の人と違います。コーンが黄色くなく、黒いのです。目を凝らしてみると、体長5ミリほどのまだ幼いGさんが蒸された状態であることがわかりました。前回のようなしがらみはなかったのですぐに店員さんを呼んで交換してもらいました。
責任者が出てきてお詫びするようなことはなく、サービスの一品もつきませんでした。物自体は交換してもらったので、そのあたりへの不満はこれといってありません。

ただ、その時は「こりゃまたうまい場所にきれいに収まったものだな」と面白がっていただけだったのですが、後々、Gがコーンと同じ位置でそのまま蒸されるような偶然はないなと思うようになりました。何かの拍子に紛れ込んだのだとしても、じゃあ本来そこにあるべきコーンはどこにいったんだよという話にもなります。せいろの中にコーンの痕跡はありませんでした。
となると何者かによる、なんらかの悪意があっての出来事だったと考えるのが自然のような気がします。例えば社会に対して鬱屈した感情を抱いていた店員さんがむしゃくしゃしてやってしまったとか、お店と敵対していた店員さんが迷惑をかけてやろうと考えたとか、です。
さすがに特定の個人を狙った嫌がらせという線はないと思いますが、まぁ、なんとも変な、そしてどうでもいい出来事ではありました。

異物混入のお話は三部作なので、次回で終わりです。虫が苦手な方は本当にすみません。

(2018.7.1更新)

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