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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

ハルとロジャーの冒険大作戦 8

スペイン帆船の秘宝

ウイラード・プライス 著
中尾 明 訳
中山正美 さし絵
集英社 昭和49年6月 初版 450円

スペイン帆船の秘宝
イラスト:あみあきひこ

サイコパス
世界中の野生動物を捕らえて動物園などに供給するアニマルハンターの兄弟、ハルとロジャーが今回活躍する舞台は西太平洋のトラック諸島。アメリカ海洋学研究所の依頼で珍しい海洋生物を生け捕り、17世紀に沈没したというスペインの帆船も調査するというミッションです。

シリーズに共通しているのは自然の脅威以上にやっかいな悪人が出てくるということです。今回悪い奴枠で登場するのはハルのハイスクール時代の同級生でスキンクというニックネームの男です。海洋学者のブレイク博士からリーダーの座を奪ってやろうという野望を持って調査隊に加わってきました。
学生の頃のスキンクは様々な面で高いスキルを持ちながら、卑劣な行為でフットボール・チームから追放されたり、カンニングで停学になったりする問題児でした。更にはそうした行為が可愛く思えるような事件も引き起こしています。

生物学の先生は、スキンクが顕微鏡をぬすんだので、きびしくしかった。その腹いせに、スキンクは、先生のポケットに、ガラガラヘビを、こっそり入れた。

ヘビにかまれた先生は危うく命を落としそうになり、スキンクは退学処分となりました。


記憶に残っている知識
ストーリーの記憶はあまりなく、覚えていたことも次の2点ぐらいでした。

◆ポリネシア式ウミガメ漁。ロープをくくりつけたコバンザメを放ち、サメがウミガメのお腹に取り付いたの見計らって引き寄せて捕らえる。

◆2メートル近い大きさのオオシャコガイは殻に挟まれて溺れ死んだ人がたくさんいたので「人食い貝」と呼ばれている。

ただしオオシャコガイに関しては、実際に人間が足を挟まれて溺れたという事例がないことを当時から知ってはいました。

自分がこのシリーズに求めていたのはハルとロジャーが世界中の珍しい動物を捕まえる展開です。しかし一口に動物とは言ってもその関心度には哺乳類 ≧ 爬虫類 ≒ 両生類 > 昆虫類 > 鳥類 > 魚類という序列がありました。
「スペイン帆船の秘宝」に出てくる珍しい生き物はリュウグウノツカイぐらいで、あとはサメやウツボ、タコが出てくる程度です。おまけに物語の後半は沈没船探索がメインとなってしまうのでテンションが下がり気味になり、あまり記憶に残らない一冊となってしまったのかもしれません。


博士の運命
昔に読んだ内容を覚えてないということにはマイナスの印象がありますが、こうして読み返す機会があれば新鮮にストーリーを楽しめるというプラスの面もあります。

物語の終盤、調査隊のリーダーであるブレイク博士がオオシャコガイに足を挟まれてしまいます。口を開いた貝がそこにいることを知りながらわざと何も教えなかったスキンクの仕業です。その現場にふたりしかいないことをいいことに、潮が満ちてきて博士が溺れそうになってもスキンクは助けるフリしかしません。博士を亡きものにしてリーダーの地位に就くのが狙いです。

「すみません、ぼくには、貝のからに穴をあけられそうもありません。」
ブレイク博士は、水面にかくれかけている口でいった。
「よし、最後の手段だ。わたしの足を切断しろ。」
この命令には、残忍なスキンクも、ひるんだ。
「そんなこと……できません。」
「それじゃ、わたしが自分でやる。」

危機一髪のところでハルとロジャーがやってきてスキンクの悪事があばかれるんだろうなとタカをくくっていたところ、その予想は足を切断しかけた博士の溺死体が発見されるという形で裏切られました。
記憶がなかった分、こんなハードな展開があったんだと驚かされたという意味では十分楽しめたかと思います。

少年向けの冒険小説でスキンクほどの悪党に鉄槌が下されないはずがありません。最後は台風という大自然の怒りに巻き込まれ海の藻屑と消えます。

(2019.2.17更新)

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