思い入れのある作品だけについ語り過ぎて長くならないよう、かなり注意して推敲を重ねたはずなのですが、やはり結構なテキスト量になってしまいました。今回は2回目になります。「その1」はこちらからどうぞ。
「ティティって、ときどき、ほんとうにあったことと、なかったことの区別がつかなくなるのよ。」
と言われてしまうほどの空想好きです。
キャンプ地で子どもたちはレモネードをラム酒、コンビーフをペミカン(極地探検用の携帯食)などと呼んで探検家や海賊の気分を味わいます。その設定に一番熱心なのがティティで誰かがうっかり元の名前で言ってしまった時にはよく訂正している印象があります。
湖に浮かぶ屋形船で生活している男はウォーカー家の子どもたちが自分の船にいたずらをしたと思い込んでいて、ジョンに非難の言葉を投げつけてきたことがありました。
自分たちがフリント船長と名付けた男から身に覚えのないことで責められた子どもたちは憤懣やるかたありません。特にロビンソン・クルーソーや海賊の出てくるような冒険物語が好きなティティの口からは
「それから、おばさんはだまりこくっちゃって、わたしがね、フリント船長なんて畜生だから屋形船なんて沈んじまえばいいって言っても、もう何にも言わないのよ。」
「フリント船長を殺しちゃえ!」
といった物騒な言葉が飛び出す様は愉快です。
最年少のロジャはやっと足をつけずに泳げるようになった7歳の男の子です。ロジャがきちんと泳げるようになるのを監督するのはジョンやスーザンの役目でした。
「ほんとうに泳げたの?」と、航海士が言った。
「アイ、アイ、サー(ほんとうであります)。」と、ボーイが言った。「三度蹴ったんだよ。なんにもさわらずに。おいでよ。見せてやるから。」
時としてちょっと口ごたえすることはあっても、やはり船乗りに憧れる少年なので階級が上の者の指示にはきちんと従います。
やんちゃでいつもお腹を空かせている末っ子キャラですが、実はウォーカー家にはロジャの下に2歳になったばかりの女の子がいます。さすがにまだ赤ちゃんなのでキャンプには参加していません。
小さな船には二人の女の子がのっていて一人がかじをとり、もう一人はまん中の腰掛梁にすわっていた。その二人は、そっくり同じと言ってよかった。二人とも、赤い毛糸の帽子、茶色のシャツ、青い半ズボン、ストッキングなしという身なりだった。
ナンシイはジョンより少し背が高く、おてんばやじゃじゃ馬という形容がぴったりの少女です。妹に対しては海賊らしく
「そこでやめ、ペギイ、とんま。」
といったような荒っぽい口調の時もありますが、お母さんとの約束を守ってお昼ご飯までにはきちんと家に帰るような、根本では育ちの良いお嬢さんです。
明るくさっぱりとした性格で、お互いの船を奪い合う戦いをして敗れた時も、潔く負けを認め相手の作戦を褒め称える気持ち良さを見せてくれます。
「わたしがお茶いれましょうか?」と、ペギイ・ブラケットが言った。
「待て、ペギイ、」とナンシイ船長が言った。「われわれは戦いにやぶれたんだ。ジョン船長が指揮官なんだ。ジョン船長、貴船の航海士からお茶をいただけますか?」
問題児とまでは言わないものの、元気で型破りな女の子は主人公としての資質十分です。男女どちらからも愛されるナンシイは、たぶん作品の中で一番人気のあるキャラクターなのではないでしょうか。
妹のペギイはおしゃべり好きな面倒見のいい女の子で、スーザン同様アマゾン号の料理長も務めています。
屋形船のフリント船長は実は彼女らの叔父さんでした。勘違いだったとはいえウォーカー家の子どたちを侮辱したフリント船長に宣戦布告するためにナンシーはひとりでボートに乗って屋形船に向かいます。
「わたしたちもツバメ号を出して、あの人をたすけにいったほうがいいんじゃない?」と、ティティが言った。
「ううん、いかないほうがいいの。」と、ペギイが言った。「たすけが必要なら、ひとりじゃいかなかったわよ。」
姉のイメージが強烈なのであまり目立つことがないのは残念ですがペギイがナンシイの良き理解者であり、いろいろフォローしてきたであろうことが伺える好きなシーンです。
作中で年齢が明示されているのは7歳のロジャだけです。個人的にはナンシイが13歳でジョンとペギイが12歳、スーザン11歳、ティティ9歳くらいをイメージして読んでいました。