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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

へそもち

渡辺茂男 さく
赤羽末吉 え
1966年8月1日発行 福音館書店

へそもち
イラスト:あみあきひこ

おへそを取られると
かみなりは雨を降らせてくれます。でも困るのは時々家や高い木に飛び降りてくることでした。
かみなりに飛び降りられた桶屋さんは桶を456個も壊されてしまった上に、おへそを持っていかれてしまいました。

それで おけやさんは、おなかに ちからが はいらなくて、
おけを つくれなくなってしまいました。
「うん」と ちからを いれると、「すん」と ぬけてしまうのです。

かみなりは毎日のように飛び降り、瀬戸物屋さんから牛まで、おへそを取られたものはみんな力が出なくなってしまうのでした。
こうしたかみなりの被害を食い止めようとお寺の和尚さんは五重の塔のてっぺんに古い槍を立てました。この策は見事にはまり、お寺に飛び降りたかみなりはトラ皮のパンツが槍にひっかかって身動きがとれなくなります。

子どもの頃は大して気に留めていませんでしたが、大人の目で読むと避雷針というシステムがうまく物語に組み込まれているんだなと感心させられました。
また、昔話風ではあるもののパンツは「ぱんつ」と書かれているあたりも面白かったです。


かみなりの言い分
さんざんひどい目にあってきた村の衆から殺してしまえなどと罵倒される中、和尚さんがなぜ悪さをしたりおへそを盗んだりするのかと問うと、かみなりはしおらしく答えます。

「もう、けっして いたずらは いたしません。
でも、おへそは、わたしの だいこうぶつです。
おへそを たべないと、あめを ふらすことが できません。」
「それは、こまったな。」

考えを巡らせていた和尚さんははたと思いつき、村人にお餅をつかせると、それで山のように「へそもち」を作りました。

「こうれ、かみなりや、へそもちが できたから、これを おたべ」

かごに入ったへそもちが大きな凧で塔の上に運ばれると、かみなりはその凧に乗って黒雲まで帰っていきました。

へそもち 解決方法がとても優しく、結果的にお土産をもらって帰るような感じになったかみなりが可愛らしく思えるお話で、中に何か具が入っているのか、どんな味がするのか一切明かされない謎の食べ物「へそもち」にも憧れたものです。


装丁
装丁 この絵本は月刊予約絵本〈こどものとも〉の一冊として出版されたものです。幼稚園を窓口にして契約すると毎月配本されるシステムでした。出版年からすると元は姉の本だったのかもしれません。
雑誌やノートで馴染み深いB5タテのサイズですが、ページは左右に開くのではなく、カレンダーのように下から上へめくるようになっています。タテに長い見開きのスペースは空間を感じさせるにはうってつけで、高い空から落ちてくるかみなりやそびえ立つ五重の塔がダイナミックに描かれているのも特徴です。

ところで、日本ではかみなりはおへそを取っていく存在として知られています。この噂が広まった原因として諸説ある中では、かみなりが鳴る時は大気が不安定になり気温も急に下がったりするので、小さな子どもがお腹を冷やさないよう「おへそをとられちゃうよ」といってちゃんとしまわせるようにさせたからだとする説が素直に納得できて好きです。

(2020.9.21更新)

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