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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

ないたあかおに

ぶん・はまだひろすけ
え・いけだたつお
偕成社 昭和40年12月5日発行 定価290円

ないたあかおに
イラスト:きみこ

優しく親切な鬼
「ひろすけ絵本」シリーズの2巻目です。
創作童話としてはかなり有名だと思うので、読んだことはなくてもおおよその内容は知っているという方も多いのではないでしょうか。

人間と仲良くなりたいと思っていた赤おにが家の前に立て札を出します。

こころの やさしい おにのうちです。
どなたでも おいでください。
おいしい おかしも ございます。
おちゃも、わかしてございます。

ところが人間たちは怖がって近づいてきません。
がっかりする赤おにに親友の青おにが、自分が一芝居打って村で暴れてみせるので殴ってやっつけろと提案します。悪い鬼を懲らしめれば人間の信頼を得られるという目論見です。
この策は功を奏し、良い鬼として認められた赤おにの家にはたくさんの人々が訪れるようになりました。

赤おにがしばらくして青おにの家を訪ねるとそこには誰もいませんでした。ふたりが仲良くしていては人間に怪しまれると懸念して旅に出てしまったのです。
家の扉には赤おにに宛てた手紙が貼られていました。

(前略)
ながい たび、とおい たび、けれども、ぼくは、どこに いようと、きみを おもって いるでしょう。
きみの だいじな しあわせを いつも いのっているでしょう。
さようなら、きみ、からだを だいじに してください。
どこまでも きみの ともだち あおおに

赤おには手紙を何度も読み返し、そして涙を流しました。


それほど悲しくなかった
幼少時はそれほど悲しいお話とは捉えていなかったような気がします。読んでくれている親が悲しそうにしているので自分も悲しくなってくるといった程度だったかもしれません。
膝をついて泣いている赤おにの絵はもちろん覚えていました。ただそれ以上に、しゃがんで鳥にエサをやっている赤おにの姿がかわいいとか、赤おにの家に用意されているお菓子がおいしそうだとか、村で暴れている青おにの絵がかっこいいとか、赤おにより青おにの方が男前に見えるとか、村人たちの前で踊っている赤おにのポーズが変だとかいったことの方がより深く記憶に刻まれていました。
そもそも青おには旅行に出かけただけなので遠からず帰ってくると思っていた節があり、それゆえにあまり悲しまないで済んでいたような気もします。

ちなみに数ヶ月前のWikipediaのあらすじには「その後、赤鬼が青鬼と再会することはなかった」という記述があったのですが、今チェックしてみたらなくなっていました。


似た者同士
性格はいいのだけれどなにかと要領の悪そうな赤おにと、頭の回転が早く、なんでもてきぱきとこなすことができそうな青おに。子どもの頃はなんとなく青おにの方が優れているように思っていました。
ところが赤おににわずかなリスクも負わせたくないと考える青おにの取った行動は自分が消えることでした。どうやら色が赤だろうと青だろうと鬼というものは不器用な生き方しかできないようです。

「ないたあかおに」の本はいろいろ出版されています。偕成社のこの絵本ももちろん今でも本屋さんで売られています。表紙に描かれている赤おには雲に乗って空を飛んでいて、ちょっとカミナリ様っぽいです。


※今回からきみこさんにもイラストを提供していただいています。きみこさんについてはこちらをご覧ください。

(2017.9.22更新)

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