るるこは、まず、とてもながいくびをつくりました。
「あたしのきりんは、キリカっていうの。キリカは、せかい一くびがながいのよ。だって、きりんはくびがながいほど、りっぱなんですもの。」
クレヨンで大きな目と口を描くと驚いたことにキリカはおしゃべりを始め、るるこを乗せて庭を走り回ってくれました。
遊び疲れて戻ってきた子供部屋は天井が低くて頭がつっかえてしまうため,長い首を窓から外に出して休むことにします。ところが夜の間に降った雨のせいでキリカの首はくたくたにしおれてしまい、きれいなももいろもすっかりハゲ落ちてしまいました。
首は強くまっすぐになっても、色はハゲたままです。元通りの色にするため、るることキリカは遠くに見えるクレヨンの木を目指しました。その木に実っているバナナみたいに大きい、色とりどりのクレヨンの中からももいろを選んでキリカの首を塗ればいいのです。
しかし木のそばにはオレンジ色の意地悪なクマがいて、クレヨンを独り占めしていました。レモン色のサルや空色のウサギといったカラフルな動物たちも、少し色がハゲてしまった部分を塗ることができずに困っています。
「オレンジぐまは、なんてわるいやつだ。もしぼくに、ももいろのクレヨンをとらせなかったら、やっつけてやろう。」
キリカはその強い首でクマを遠くへ吹っ飛ばし、みんなは好きなだけクレヨンを使えるようになりました。
「こまったようー、あたしひとりじゃかえれないようー、うおーっ、うおーっ。キリカがこんなとおくへつれてきちゃったようーっ、うおーっ、うおーっ。」
大人になってから読むと子どもらしく、愛らしくさえ思えるシーンも、るること同じような年齢だった当時は自分の思い通りにならないからといって「うおーっ」と泣き叫ぶのはいかがなものだろうと批判的な目で見ていました。幼児といえども自分をもう少しコントロールするべきだと思っていたのでしょう。
結局キリカが折れ、動物たちがなだめすかすことでやっと落ち着きを取り戻すのも、なんだか周囲に迷惑をかけているようでイヤでした。
記憶の中のるるこはちょっと乱暴で意地悪な性格でした。しかし読み返してみると全然そんなことはなく、年相応のごく普通の女の子でした。先にあげたようなマイナスイメージにオレンジぐまの意地悪な奴という記憶が混じってしまったのかもしれません。るるこちゃん、ごめんなさい。
るるこは帰る時に動物たちから大きな画用紙をプレゼントされます。それは描いたものがすぐに本物になる魔法の画用紙でした。家に着いたるるこはさっそくクレヨンでキリカの頭がつっかえたりしない大きなおうちを描きました。
自分が作ったキリンが動き出して友達になってくれるのと同じくらいに、この魔法の画用紙は羨ましかったです。
ところでこの場面の挿絵のクマが昔からサル(ヒヒ系)に見えて仕方がありませんでした。今回改めてじっくりと見てみたのですが、やはりクマというよりはサル(ヒヒ系)の印象の方が強かったです。幼少期の刷り込みもあるので、もうクマとは認識できなくなっているようです。
挿絵の中川宗弥は作者中川李枝子の旦那さんです。そして中川李枝子は「ぐりとぐら」「いやいやえん」「そらいろのたね」といったよく知られている本の作者でもあります。このあたりのことは今回初めて知りました。
ロングセラーである「ももいろのきりん」は今でも本屋さんでお求めいただけます。