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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

エルマーのぼうけん

ルース・スタイルス・ガネット さく
ルース・クリスマン・ガネット え
わたなべしげお やく
福音館書店 1963年7月15日 初版発行
1969年8月20日 新版第8刷発行 450円

エルマーのぼうけん
イラスト:杉本 早

メジャー作品
雲の上からあやまって地上に落ちてしまい、そのまま動物島に捕らわれている竜の子どもを助けに行く少年、エルマーの冒険物語です。幼い頃は読んでもらい、字が読めるようになってからは自力で何度も接してきた本だけあって細部までよく覚えていました。
今でも本屋さんでは平積みされていますし、国語の教科書に載っていたこともある作品ですので知っている方も多いかと思います。

1948年に発表されたこの作品はルース・S・ガネットが22歳の時に書き始めたもので、挿絵を担当しているルース・C・ガネットはお母さんです。ただ、お父さんの再婚による義理のお母さんなので血のつながりはないそうです。

2018年11月現在、作者がまだご存命なのを知り驚きました。

※今回の感想文の下書きは1年以上前に済ませていました。アップするに当たって失礼ながら作者はまだご健在かなと検索してみたところ、今年の8月に来日されていたことを知りました。なんとお元気な!


リュックの中身
冒険に先立ってエルマーはリュックにいろいろなものを詰め込みます。

エルマーのもっていったものは、チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー二ダース、わゴム一はこ、くろいゴムながぐつ、じしゃくが一つ、はブラシとチューブ入りはみがき、むしめがね六つ、さきのとがったよくきれるジャックナイフ一つ、くしとヘアブラシ、ちがったいろのリボン七本、『クランベリいき』とかいた大きなからのふくろ、きれいなきれをすこし、それから、ふねにのっているあいだのしょくりょうでした。

一見何の役に立つのかよくわからないこれら雑多なものを駆使して、エルマーはトラやライオン、ワニなどの動物と渡り合い様々なピンチを切り抜けていきます。
日常生活の中で簡単に手に入るようなものがエルマーの機転ひとつで効果抜群なアイテムへと変わる様に多くの子どもたちが魅了されてきたに違いありません。

ところで今回読み返して気づいたのは「きれいなきれ」だけ特に出番がなかったということです。まさかと思って更にもう一度読んでみましたので、見落としてはいないと思います。
リュックに入れられたものは余すことなく有効に使われたものと思い込んでいただけにちょっと意外でした。


かなり荒い動物たち
動物島は全体的に荒々しい雰囲気で、ならず者の集まりといった様相を呈しています。落ちてきた子どもの竜は誰にも同情されず、泳げない動物が大きな川を渡るための乗り物として綱で繋がれていました。

りゅうが、川のこちらがわにいるときには、ゴリラが、ちからいっぱいりゅうのはねをねじまげます。そうすると、りゅうは、いたくてがまんができなくなって、むこうがわのきしにとんでいくのです。
りゅうが、むこうがわのきしにいるときには、ゴリラが、こちらがわで、ハンドルをちからいっぱいまわします。そうすると、りゅうは、くびをしめつけられるので、くるしくてたまらなくなって、いやでもこちらがわのきしにもどってこなければなりません。

エルマーならずともなんとかして助け出してあげたくなる境遇です。

口車にまんまと乗せられてしまうような動物たちはみんな魅力的で憎めないキャラクターではあるものの

「だまされたあ! だまされたあ! あいつが、しんにゅうしゃだ。りゅうを、たすけにきたやつだ。ころせえ! ころせえ! ころしてしまえ!」

と口々に叫びながら追いかけてくるなど、なかなか怖い存在です。動物島に渡った者は誰も生きて帰ってこれないと人々が恐れているのも納得です。


気になっていたこと
動物たちの中でネズミはかなり記憶に残っていました。エルマーの目撃情報を他の動物に伝える程度でこれといった活躍をしないネズミが印象深い理由は言葉の使い方を間違えるからです。

無事救助に成功したエルマーが竜と共に動物島を飛び去る姿を見てネズミは叫びます。

「どもれ! どもれ! うりゅが、ようひつだ! うりゅが、ようひつだ! おっと、まちがい。もどれ! りゅうがひつようだ!」

「こんな簡単な言葉を間違えるネズミはバカだなぁ」という幼児なりの優越感と共に記憶に刻まれたのでしょう。
ちなみに原文ではどうなっているのか気になっていたので調べてみると

"Bum cack! Bum cack! We dreed our nagon! I mean, we need our dragon!"

と書かれていました。プロはうまく翻訳するものだなぁと感心した次第です。

気になっていたといえばエルマーが冒険に持参する、アメリカのお話にはよく出てくる食べ物「ピーナッツバターとゼリーをはさんだサンドイッチ」もそうです。
当時はゼリーというと駄菓子屋にあるオブラートで包まれた直方体のものか、お皿に乗っていてスプーンですくって食べるもののどちらかしか思いつかなかったので、それをサンドイッチの具にするというのがよくわかりませんでした。
こちらは薄々想像はついていましたが、ゼリー=ジャムという認識でいいようです。

(2018.11.23更新)

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