1948年に発表されたこの作品はルース・S・ガネットが22歳の時に書き始めたもので、挿絵を担当しているルース・C・ガネットはお母さんです。ただ、お父さんの再婚による義理のお母さんなので血のつながりはないそうです。
2018年11月現在、作者がまだご存命なのを知り驚きました。
※今回の感想文の下書きは1年以上前に済ませていました。アップするに当たって失礼ながら作者はまだご健在かなと検索してみたところ、今年の8月に来日されていたことを知りました。なんとお元気な!
エルマーのもっていったものは、チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー二ダース、わゴム一はこ、くろいゴムながぐつ、じしゃくが一つ、はブラシとチューブ入りはみがき、むしめがね六つ、さきのとがったよくきれるジャックナイフ一つ、くしとヘアブラシ、ちがったいろのリボン七本、『クランベリいき』とかいた大きなからのふくろ、きれいなきれをすこし、それから、ふねにのっているあいだのしょくりょうでした。
一見何の役に立つのかよくわからないこれら雑多なものを駆使して、エルマーはトラやライオン、ワニなどの動物と渡り合い様々なピンチを切り抜けていきます。
日常生活の中で簡単に手に入るようなものがエルマーの機転ひとつで効果抜群なアイテムへと変わる様に多くの子どもたちが魅了されてきたに違いありません。
ところで今回読み返して気づいたのは「きれいなきれ」だけ特に出番がなかったということです。まさかと思って更にもう一度読んでみましたので、見落としてはいないと思います。
リュックに入れられたものは余すことなく有効に使われたものと思い込んでいただけにちょっと意外でした。
りゅうが、川のこちらがわにいるときには、ゴリラが、ちからいっぱいりゅうのはねをねじまげます。そうすると、りゅうは、いたくてがまんができなくなって、むこうがわのきしにとんでいくのです。
りゅうが、むこうがわのきしにいるときには、ゴリラが、こちらがわで、ハンドルをちからいっぱいまわします。そうすると、りゅうは、くびをしめつけられるので、くるしくてたまらなくなって、いやでもこちらがわのきしにもどってこなければなりません。
エルマーならずともなんとかして助け出してあげたくなる境遇です。
口車にまんまと乗せられてしまうような動物たちはみんな魅力的で憎めないキャラクターではあるものの
「だまされたあ! だまされたあ! あいつが、しんにゅうしゃだ。りゅうを、たすけにきたやつだ。ころせえ! ころせえ! ころしてしまえ!」
と口々に叫びながら追いかけてくるなど、なかなか怖い存在です。動物島に渡った者は誰も生きて帰ってこれないと人々が恐れているのも納得です。
無事救助に成功したエルマーが竜と共に動物島を飛び去る姿を見てネズミは叫びます。
「どもれ! どもれ! うりゅが、ようひつだ! うりゅが、ようひつだ! おっと、まちがい。もどれ! りゅうがひつようだ!」
「こんな簡単な言葉を間違えるネズミはバカだなぁ」という幼児なりの優越感と共に記憶に刻まれたのでしょう。
ちなみに原文ではどうなっているのか気になっていたので調べてみると
"Bum cack! Bum cack! We dreed our nagon! I mean, we need our dragon!"
と書かれていました。プロはうまく翻訳するものだなぁと感心した次第です。
気になっていたといえばエルマーが冒険に持参する、アメリカのお話にはよく出てくる食べ物「ピーナッツバターとゼリーをはさんだサンドイッチ」もそうです。
当時はゼリーというと駄菓子屋にあるオブラートで包まれた直方体のものか、お皿に乗っていてスプーンですくって食べるもののどちらかしか思いつかなかったので、それをサンドイッチの具にするというのがよくわかりませんでした。
こちらは薄々想像はついていましたが、ゼリー=ジャムという認識でいいようです。