船の遭難でカリブ海近辺の無人島に漂着したロビンソン・クルーソーが30年近い年月の後、無事母国イギリスに帰還するお話です。
それまで読んできた漂流記との最大の違いは主人公が独りだということです。海岸に人の足跡を見つけ、島に人食い人種と呼ばれる蛮人がやってくることもあると気づくのが15年目。蛮人同士の争いから助け出した男をフライデイと名付け従者にし、ようやく話し相手ができたのが25年目のことでした。
生き抜いていくことは孤独との戦いでもあり、元々は信仰心の薄かったロビンソンが神に祈りを捧げるようになっていったのもうなずけます。
また、せっかく見つけたサトウキビが野生のため食用に向かなかったり、麦を栽培しようとするも始めのうちは失敗してしまう描写などにはリアリティがあり、少年向けの作品とは一味違う感じがしました。
その後、ネコが増えてひどく悩まされるようになり、けっきょく野生の獣のように殺して、できるかぎり家に近づけないようにせざるをえなかった。
現代の人が同じテーマで小説を書いた場合はこんな扱いにはならないかと。「赤毛のアン」シリーズの3作目「アンの愛情」の中でネコを殺そうとする場面があったことなども思い出しました。昔と今ではもののとらえ方がいろいろと違っていて面白いです。
無事に帰国したロビンソンは、財産処理などのために一度ポルトガルを訪れ、ここから再度イギリスに戻る際には陸路を選択しまた。20人ほどの隊を組んでピレネー山脈を越えるルートで、この時にオオカミやクマと遭遇します。特にオオカミの襲撃はすさまじいものでした。
ともかくオオカミが、われわれを獲物としてねらいを定め、まもなくおそってくることはまちがいない。三百匹はいるであろう。
オオカミは群れを作って狩をする動物です。しかし群れの平均は3〜11頭の間で、記録上の最多頭数でも42頭だそうです。
300頭のオオカミというスペクタクルなシーンを想像して思わず笑ってしまいました。狭い地域にこれだけの密度でオオカミがいればどう考えてもエサは不足するはず。人間だろうとなんだろうと襲わずにはいられないでしょう。
ちなみにロビンソンたち一行は60頭以上のオオカミを倒し、このピンチを切り抜けました。
しかしこれらのことは、このあと十年ほどのあいだにわたしが経験したあらたな冒険での出来事とともに、またお話する機会があればと思っている。
懲りない人だなぁという感想と共に頭に浮かんできたのは映画のインディ・ジョーンズのシリーズでした。
巻末の解説を読んで驚いたのは今回読んだものは「ロビンソン・クルーソー」の第一部であるということです。
『ロビンソン・クルーソー』には、じつはさらに、アフリカからインド、中国にいたる二度目の冒険を記した第二部と、二度にわたるこうした冒険についてクルーソー自身が感想を述べるという設定の第三部が存在するそうです。
全然知りませんでした。