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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

レモンと実験

A・ハリス・ストーン 著
小林 実 訳
ピーター・P・プラセンシア 画
福音館書店 1970年12月1日 AJBC版第1刷 350円

レモンと実験
イラスト:浅渕紫歩

文系の子
レモンを使ってできる様々な実験を紹介して子どもたちに科学への興味を持ってもらおうという本です。64ページの中には20種類以上の実験が載っています。
自分が欲しかったというより、たぶん科学的なものに目覚めることを期待して親が買ってくれた本だったと思います。誤算は息子が幼い頃から文系気質だったため、期待したような効果が生まれなかったことでしょうか。
レモンがメインなのででんじろう先生のように派手な実験ではなく、そうした地味さがいまひとつ興味を示せなかった理由のひとつかもしれません。
親にしても特に理系方面に進んでもらいたいという希望があったわけではなく、単純に子どもの持つ様々な可能性を育んでやりたかったのだと思います。その親心には感謝しかありません。


質問のプレッシャー
実験は紅茶にレモンを入れると色が変わりますといった日常的で簡単なものからレモンで作る電池といった、ちょっと手間がかかりそうなものまでいろいろです。

化学者は実験したり考えたりします。わたしたちも化学者とおなじように、実験したり考えたりしながら、レモンを使って化学を学んでいきましょう。いちばんだいじなのは、つぎのような疑問をもつことです。
どんなことがおこるか?
それはどんなふうにおこるか?
なぜそうなるんだろう?

おなじ福音館書店の「恐竜のはなし」に通じる生真面目さがあり、まだ低学年だった自分には難しい本だったかもしれません。
また実験から疑問を持ち、そこから更に一歩踏み込んでもらいたいという観点で書かれているので、例えば牛乳にレモンを入れて「ぎょうこ」させる実験のページでは

レモンのしるをなまたまごのしろみに入れると、変化がおこりますか? なぜそうなるのでしょう?
すでもレモンのしるとおなじような変化がおこるでしょうか? れもんのしるの場合と、すの場合とで、ちがいがありますか?

と質問攻めにあってしまいます。全編を通して矢継ぎ早にたくさんの質問が出てくるので、プレッシャーに強くないタイプの自分はそこも負担に感じていた可能性があります。


実際にやってみた実験
あぶり出しを作るとかベーキングパウダーにレモン汁をかけると泡が出るといったごく簡単な実験は実際にやってみて楽しかったです。
ただ、レモンと酒石酸カリウムナトリウムで「銀みがき」が出来ると言われても困ってしまいます。巻末の解説に酒石酸カリウムナトリウムの入手方法は書かれていますが、仮にそれを入手して「銀みがき」を作ってみたところで、我が家にはその効果を試してみる銀器などありませんでしたし。

一番印象に残っているのが、レモン汁で十円玉を磨くと銅と酸素が結びついた酸化銅が溶けてピカピカになりますという実験です。確かにきれいになって、最初は「おお!」と思ったのですが、どうも想像していたものと違う。表面のくすみがとれて、なんとなく肌色に近い感じのきれいさにはなっても、銀行で両替してもらった時の新品の硬貨のようにはならなかったからです。
科学の道へ進むような子どもであればここで「なぜ期待したようなピカピカにならないのか」という疑問を抱きその原因を探ろうとするのかもしれません。どうやら私は「ま、そんなものか」で終わってしまう口だったようです。


イラストがいい感じ
「レモンと実験」はイラストが豊富です。実験の手順を解説するようなものではなく、お兄ちゃんと妹と思われるふたりの子どもが実験をしている様子をスナップ写真的に描いたものです。日本人ではなく外国の子どもなんだなということが一目でわかるような絵で、当時はちょっと冷たい感じがするなと思っていましたが、今の視点でみるとけっこう可愛く見えました。

たしか同じシリーズで風船を実験材料にする本もあったと思います。もし出てきたら、その感想文も書いてみたいと思います。

(2017.11.7更新)

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