微妙に長くなってしまいましたので感想文を2回に分けました。今回は後編となります。
前編はこちらでご覧ください。
アメリカのコミックスは基本的には幼年者向けだと書かれた記事をずいぶん昔に読んだことがあります。例えば中学生くらいでマンガを読んでいると「おいおい、まだそんなもん見てんのかよ」とバカにされてしまうイメージです。
一方日本では低俗という理由でPTAなどから糾弾されることはあっても、大学生や社会人にまで及ぶ広い層がマンガを楽しんでいました。
こうした文化的背景がマンガを悪者にしていることに対して抵抗を感じさせたのかもしれません。
物語の最後、ニョゴニョゴがサム君の元から去る場面はしんみりしたものです。
かいぶつニョゴニョゴは、サムくんが左手にもっていた図書館のカードを見て、くびをふりながらいいました。
「おれ、こんなこと、ぜったいほかの人にはいわないだわさ。でも、おれ、いつもしたいことがあっただわさ。わらわないとやくそくすれば、おれ、それをはくじょうするだわさ。」
「やくそくするよ。」と、サムくんはいいました。
「おれ、いつでもいつでも、図書館の本だなの上におかれるような、本の主人公になりたかっただわさ。」
スパイダーマンやアイアンマンといったコミックス出身のキャラクターがハリウッド映画で大活躍している昨今ではまた事情が変わっているかもしれませんが、1970年代当時ニョゴニョゴに一番同情したのは日本人だったのではないかと思ったりします。
「おまえ、あのイッキーおじさんをしらなかったのかい。ねずみとあひるのあいのこで、ダックマウスという、ゆうめいなマンガの国の動物だわさ。」
イッキーおじさんには三匹の姪がいますし、そもそも名前からしてあのキャラとあのキャラを足して2で割ったんだなというのは容易に想像がつきます。オリジナルもディズニーをパロっているのか、それとも訳者の遊び心のなせるわざなのか。「はなのすきなうし」がアニメ化されるくらいの関係にはあったわけですからたぶん前者だとは思うのですが、ちょっと気になりました。
もうひとつは訳者のあとがきに書かれていたことに興味がわいたからです。
なお、『サムくんとかいぶつ』には、もう一章、サムくんがジャングルにいく話があるのですが、これは日本の子ども達に不適当と考えたので省略しました。
暴力や性の表現に関しては日本よりアメリカの方がはるかに厳しいでしょうし、そもそも「サムくんとかいぶつ」にそんな場面が出てくるはずがありません。となると太平洋戦争を舞台としたマンガの中でサム君たちが日本兵をやっつけるようなお話だったのかなと想像したりするのですが、どうなんでしょう。
まぁ、わざわざ本国から古本を取り寄せるほどの熱意も英語力もないので、これらの疑問が解決されることはなさそうです。
※ご紹介が遅れてしまいましたが「ケニアの人食いライオン」から蜥蜴男さんにもイラストを提供していただいています。蜥蜴男さんについてはこちらをご覧ください。