1983年にはNHKで「スプーンおばさん」というタイトルでアニメ版が放映されていましたので内容を知っている方も多いかもしれません。児童書としてはかなり高い知名度の作品かと思います。
おっとりした人というイメージだった主人公のおばさんは、読み返してみると意外にアクティブな人でした。初めて小さくなってしまった時も肝が座っているのか、大した動揺も見せません。
「なるほど。スプーンみたいに小さくなっちゃったんなら、それでうまくいくようにやらなきゃならないわね。」
小さくなるとなぜか動物と話せるようになるので、ネズミやネコ、イヌにうまく命令して手際よく家事を片付けます。頭の回転が良くなければできない芸当です。
ただネコにきれいにさせた食器(つまりは舐めてきれいにさせた食器)をそのまま使うのはちょっと遠慮したいなとは思いました。
両親が共働きで寂しいクリスマスを送らなければならない小さな女の子におばさんがお人形をプレゼントするお話は優しい感じがして面白かったです。おばさんが小さくなってしまうことを知っているのはご亭主の他にはこの女の子だけなので秘密の共有をしている絆みたいなものも感じられました。
アニメ版をご覧になっていた方々はおばさんと関係の深い女の子というとルウリィというキャラクターを思い浮かべるかもしれません。自分はアニメ版をほぼ観ていなかったので、もしかして原作では名前もなかった女の子がルウリィとしてメインキャラに昇格したのかなと思って調べてみたのですが違いました。
ルウリィは謎の多い妖精のようなアニメオリジナルのキャラクターだそうです。「スプーンおばさん」で画像検索するとルウリィもたくさん出てきますので、なかなかの人気キャラだったのでしょう。
さて、ごていしゅのすがたが見えなくなってしまうと、おばさんは、また、どのおばさんもやるとおりのことをしました。つまり、うちの中をかたづけたりなんかしないで、またベッドによこになって……ねこんだんです。
といった描写などはホームコメディー的で、大人をニヤッとさせるものがあります。なんとなく「サザエさん」を連想してしまいました。
エピソードの中には機嫌の悪いご亭主にバンケーキ用のジャムを作ってあげようと、おばさんがコケモモを採りにいくお話もありました。「くまのバスターはあわてもの」を読んだ時のように、当時の自分はやはり未知なる食材コケモモに思いを馳せたに違いありません。
なぜ英語版ではスプーンからコショウ入れに変えられてしまったのか。残念ながらネットで少し調べた程度ではわかりませんでした。