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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

エルマーとりゅう

ルース・スタイルス・ガネット さく
ルース・クリスマン・ガネット え
わたなべしげお やく
福音館書店 1964年8月15日 初版発行
1968年9月25日 新版第5刷発行 450円

エルマーとりゅう
イラスト:あみあきひこ

後日譚
エルマーのぼうけん」の続編で、物語は動物島を脱出したエルマーと竜が空を飛んでいる場面から始まります。
動物島へは密航した船で六日六晩かかりました。帰りは空路なのでもっと楽な旅になるかと思いきや途中で嵐に巻き込まれ、エルマーと竜は海の浅瀬に不時着することになってしまいます。
冷たい海水に半身がつかった状態で一晩を過ごしたため、晴れ渡った朝になっても竜の首や足は硬直してしまって動きません。

エルマーは、とびあがって、りゅうのくびにしがみつきました。
しばらくぶらさがっていると、くびが、がくんとまがって、エルマーは、すなの上に、ばしゃん とおちました。

エルマーが凝り固まった竜の首や足をなんとか動くように曲げたり引っ張ったりするシーンはお気に入りだったのでよく覚えていました。

動物島で竜は「スカンクキャベツ」や「ダチョウシダ」を食べていました。ふたりが途中で休んだみかん島には生えていなかったのでエルマーがお腹が空いたと言う竜にみかんの皮をむいてあげると

「ぺっぺっ うわあっ まずい!」
りゅうは、げえげえいいながら、おもいきりとおくのほうへ、みかんをはきだしました。

という事態になってしまいました。
自分はみかんが好きだったので、この竜の反応が面白く、また中の実はダメでもみかんの皮ならば美味しく食べられることがわかった時は、竜のためならいくらでもみかんを食べて皮だけあげる!と思ったものです。

このように前作では登場するのが物語の終盤だったために詳しくは語られなかった竜のことがだんだん明らかになってくる巻であり、お父さんお母さん、そして13匹の兄弟姉妹たちと暮らしていたことなども判明します。


リュックの中身
不時着した浅瀬の近くにはカン十一世と名乗る国王を始めとする、人間のカゴから逃げてきたたくさんのカナリアが暮らしている島がありました。 カナリアの王様には昔島に住んでいた人間が埋めていった秘密の宝箱の中をどうしても見てみたいという願いがあり、エルマーと竜が解決に力を貸すというのが本作のメインストーリーです。

ところが食いつきの良さそうなテーマだというのに、宝探しについては「そういえばこんなお話だったなぁ」くらいの薄い記憶しかありませんでした。
前作のようにアイテムを巧みに利用する展開がなかったことが影響したような気もします。
リュックの中身は

ももいろのぼうつきキャンデーが、七本。(これは、また、きっとやくにたつとおもって、のこしておいたのです。)わゴムのたばが、はんぶんばかり。チューインガムが三まい。よくきれるジャックナイフ。それに、からのアサぶくろです。

と、いかにももう一度活躍の場がありそうな書き方をされているのにあまり効果的な使い方をされないまま終わってしまいました。期待してしまった分余計にがっかりして宝探しの印象が薄くなってしまったのかもしれません。


カナリヤ
竜は無事にエルマーを家の近くまで送り届けます。人目につかないように夜の波止場に降り立ったふたりにお別れの時が近づいてきます。
残っていた棒付きキャンディーの紙をむいてあげるエルマーとそれを4本いっぺんに食べる竜との間で交わされる言葉にはしんみりさせられました。

エルマーは、四本のももいろのぼうつきキャンデーを、なめているりゅうに、小さなこえで、ききました。
「きみ、ここから、どこへいくの?」
「ぼくは、そらいろこうげんの、すごくたかい山にすんでいる、かぞくのところへかえるよ。」

そして巻末にある、夜空へ飛び去っていく竜の絵はとても美しかったです。

ところで「エルマーとりゅう」ではカナリアは「カナリヤ」と書かれています。最近では「カナリア」と表記されることの方が多いような気がするので、そんなところにも時代を感じてしまいました。
また自分が小学校低学年の頃はペットとして小鳥の人気が高く、40人くらいのクラスで5、6人は鳥(主に文鳥)を飼っていたなどということも思い出しました。

(2018.12.10更新)

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