今回改めて手にとって作者がスターリング=ノースであることを知り驚きました。この本を読んだ時点ではアニメ「あらいぐまラスカル」は放映していませんでしたので単に外国の作家という認識しかなかったのでしょう。
昔は興味をそそられなかった内容は大人になって読み返してみるととても面白かったです。「世界の伝記」というシリーズの中の一冊なので、エジソンやシュバイツァーといった他のラインナップも読んでみたくなりました。
「これからは、自分の原稿に名をいれたいんです。」 「そりゃいい。どんな名にするんだね?」 「マーク=トウェーン!」 「マーク=トウェーン? いや、いいとは思うがね、いったいどういう意味だい?」 「水先案内をしていたころのことばです。測鉛手が、安全な二ひろのふかさがあることを確認したときに、さけぶんです――マーク・トウェーン! マーク・トウェーン! とね。」
こうしてマーク=トウェーンが誕生し、現代まで読み継がれる名作が発表されることになります。
経済的に成功した後のトウェーンには莫大な維持費のかかる大豪邸を建てたり、投機に手を出しては失敗するといった山師的行動も目立ちます。幼い頃からお金に苦労してきた経験がそうさせたのかもしれませんし、いつまでも子どもらしく夢を追い続ける人だったのかもしれません。
物語であれば「家族と共に末長く幸せに暮らしました」というハッピーエンドにすることもできますが、そう都合よくいかないのが実際の人生の厳しいところです。
自身の作品を扱うために作った出版社の経営は豪華な自宅をたたまなくてはならないほど悪化し、トウェーンは破産してしまいます。
61歳の時には長女を病気で失い、心に深い傷を負います。明るかった作風も暗いものへと変化していきました。更に69歳で最愛の妻に先立たれ、74歳で三女のジーンを亡くします。
サム=クレメンズは、もうけっして、自分の愛する者のひつぎの上に土をかける音を耳にしたくないと、かねがねいっていた。それで、ジーンがあかんぼうのころからいた、忠実な召使のケティー=レアリーが、ジーンのなきがらにつきそって、エルマイラへむかった。サムは帽子もかぶらずに、屋敷の門にたたずんでいた--クリスマスのかざりつけをうしろにして。
20代の頃には蒸気船の爆発事故で弟を失っているトウェーン。自分よりも若い多くの身内を見送ることになってしまった苦しみは察するに余りあります。
まぁ、トウェーンにしてみれば慟哭するような災難に見舞われたこともなくのんべんだらりと生きてきた者にそんなことを言われても大きなお世話でしかないと思いますが。