2回に分割するくらいの分量になってしまいました。「なげえよ」とお思いの方はせめて素敵なイラストだけでも楽しんでいってください。
ところが帆船ツバメ号は船長である長男ジョンのちょっとしたミスから岩にぶつかって沈没してしまいます。素早い判断ですぐに引き上げることはできたものの、修理のため湖での帆走は当分おあずけとなり、最大の目的である島でのキャンプはできなくなってしまいました。
悪いことは重なるもので、しつけの厳しい大叔母さんが家に滞在しているおかげでブラケット家のナンシイとペギイは厳しい管理下に置かれ、アマゾン号に乗る自由も奪われています。
ひどくかたくるしそうな老婦人が、小さな黒い日がさをさして、ブラケット夫人のとなりにしゃちこばってすわっていた。そして、そのふたりにむかいあう、御者台のうしろの小さな座席には、ふたりの少女が、すそひだのついた服を着て、夏帽子をかぶり、手袋をはめた両手をきちんとひざの上においてすわっていた。それはおそるべき光景だった。
馬車で移動中のふたりはおてんば、じゃじゃ馬が代名詞のような普段の姿からは想像もつかない有様で、たまたま目撃したツバメ号の船員たちから言葉を奪ってしまったのも頷けます。
AB船員は、自分の谷に近づけば近づくほど、ますますいそぎ足になり、谷がじぶんの思っている谷そのままかどうか、ますます不安になってきた。いままでにも、すてきだと思ってだれかをつれて見にいくと、それがぜんぜんつまらないものにかわっていることが何度も何度もあった。
キャンプをするには絶好の場所だと確信しながら、実は第一印象が強かっただけで大したことないのかもしれないと思ってしまう、ティティの不安な気持ちには当時とても共感した覚えがあります。
ジョンもスーザンも谷を気に入り、ティティの心配は杞憂に終わりました。子どもたちは谷をツバメ渓谷と名付けてキャンプ生活を始めます。
このふたりのアマゾン海賊には、どうも理解しかねるところがあった。
記憶の中ではリスペクトし合う仲良し同士という面ばかりが大きくなってしまっていて、こうしてちょっと引いてる部分も描写されていたんだなという発見は新鮮で面白かったです。
もちろんジョンもスーザンも戸惑っているだけで彼女らに批判的なわけではありません。見方を変えれば、自分たちには思いもつかないことをもたらしてくれる、とても刺激的な仲間ということになります。
大叔母さんの滞在がようやく終わったことで晴れて自由の身となったナンシイとペギイがアマゾン号の上から自分たちのお母さんに向かってキャンプに招待すると叫ぶ場面があります。
「人肉がうんとたくさんよ。」河口めざしてくだっていきながら、ペギイがさけんだ。
「それを大おばさんのステーキだと思ってたべましょうよ。」と、ナンシイがさけんだが、ブラケット夫人はきこえないふりをした。
大叔母さんが矯正したくなるのも納得のひどい発言には思わず笑ってしまいました。聞こえないふりをしているお母さんがいい味を出しています。
こんなやんちゃなふたりがなぜ大叔母さんの支配に甘んじていたのかといえば、それは自分たちが反抗することによって、しつけがなっていないという非難の矛先がお母さんに向かってしまうことがわかっていたからです。
ブラケット家はコックをやとえる程度には裕福ですし、子どもたちの良き理解者である叔父さんのフリント船長もそばにいますが、どうやらお父さんは既に亡くなっているようです。
奔放に生きているようで、お母さんだけは悲しませたくないという姉妹の優しい心根が感じられるお話にもなっています。