長くなってしまいましたので2回に分けました。
スーザンは、ヨードチンキやかぜ薬や胃の痛みどめや、ひざこぞうにはる絆創膏などがいっぱいはいっている、赤十字のマークのついた、黒いブリキの箱をもっていた。これはスーザンをいちばん喜ばせたクリスマスプレゼントだった。そしてこのクリスマス以来、スーザンはだれかがころぶと(ころぶのはいつもロジャだったが)うれしさをかくしきれなかった。
スーザンの行動に一瞬代理ミュンヒハウゼン症候群という言葉が浮かんでしまいましたが、それはこちらが年老いてひねくれてしまったせいです。
大人の専門職がいなくても十分その代わりを務めることができるごっこ遊びを極めるためには本格的なアイテムが必要であり、救急箱を手に入れたスーザンの喜びはそこにありました。
役割を課してそれをまっとうするロールプレイングこそがこのシリーズの醍醐味です。
つぎの瞬間、ティティもナンシイのとなりにならんだ。アマゾン号の船長であり、船乗りことばを連発することで知られているナンシイまで、船にようのなら、だれが船によったって恥ずかしくはない。数分の間、船長とAB船員は、共に船よいのみじめな状態のまま、いっしょにてすりの外に首をたれていた。
乗り物酔いは他の人が平気であればあるほど自分がダメに思えてくるものです。あのナンシイですら酔ってしまうこともあるのだと語ってくれたおかげで多少気が楽になりました。
幸いなことにナンシイとティティの船酔いはじきに治りました。
ところが後に、港で育ったビル少年の船酔い対策を聞いてしまったおかげで子どもたち全員に船酔いの危機が訪れます。それは紐に結びつけた大きなベーコン脂のかたまりを飲み込むというものでした。
「ひものさきはもってるんだぜ。」と、ビルは下でしかけた話をつづけていた。「そうして、ベーコンが腹の中であっちこっち動くように、ひもをこちょこちょ引っぱるんだ……」
ナンシイとスーザンとペギイはいそいで顔をそむけた。ジョンはぐっと大きくつばをのんだ。
子供の頃は読んでいて本気で気持ち悪くなりました。
ちなみに発表された当時「ヤマネコ号の冒険」は「ツバメ号とアマゾン号」や「ツバメの谷」を超えるヒットを記録したそうです。
確かにこの作品単独で捉えてみると宝探しというワクワク感と悪党に追われるスリルにあふれた満足度の高い作品であることが今回読み返してみてもよくわかりました。逆に最初に「ヤマネコ号の冒険」を読んで面白いと思った子どもが次に「ツバメ号とアマゾン号」を読んでも物足りなさを覚えたかもしれません。
個人的には最初に接したのが「ツバメ号とアマゾン号」で良かったです。