今回は自分が昔読んだ本以外の感想文になります。
企画の簡単な説明はこちらをご覧ください。
小学校入学以降、絵本との縁はほぼありません。世の中では大人も楽しめる絵本といった類のものが時折話題になっていたような気もしますが、特に興味は持ちませんでした。
本や雑誌がなかなか売れない今、絵本だけは売り上げを伸ばしているそうです。少子化なのになぜ?と思ったのですが、そもそも絵本を買うのは幼児ではなく親なので、そちらをターゲットにしたところ効果が出たということらしいです。もちろん優しさや癒しを絵本に求める大人の読者が増えたのも大きな要因でしょう。
1999年に出版された「いつまでもすきでいてくれる?」のことは全く知りませんでした。このサイトをやっていなければ生涯読むことはなかったかもしれません。
カンガルーのお母さんとぼうやの会話が中心のお話です。遊んでいた公園から家に帰る途中でぼうやが尋ねます。
おおきくなっても ぼくのこと かわいい?
もちろんよ。ぼうやが げんきで おおきくなることが、ママの ねがいよ。
大人になったとしても、リンゴの木になったとしても、石鹸になったとしても。
ぼうやの質問はお休みのベッドに入るまで続き、その全部にお母さんが優しく答えてくれる様子が柔らかく暖かい色合いの絵と共に紡がれていきます。
自分がぬいぐるみのくまになっちゃったら?と尋ねるぼうやにお母さんはこう答えます。
ほつれた ところを かがってあげる。
ママが さびしい ときに だっこを するわ。
特に肯定も否定もなく、ただあなたを愛していますという単純なメッセージがあるだけです。
ぼうやの質問の内容は、もし悪いことをしたら?というような行動にまつわるものではなく、何かに変化してしまったら?というものです。
自分はどんどん大きくなっていくけれど「いつまでもすきでいてくれる?」というかすかな不安を優しく払拭してあげる物語だったわけです。
WILL YOU TAKE CARE OF ME?
これが「いつまでもすきでいてくれる?」の原題です。LIKEでもLOVEでもないことになるほどと思ったりもしました。
自分の中学生レベルの英語力だと「面倒見てくれる?」と訳してしまいそうなタイトルが「いつまでもすきでいてくれる?」になるのですから、やはり翻訳家はすごいです。
仮に「いつまでもすきでいてくれる?」の文章にイヌやネコ、あるいはヒトといったキャラクターを当てはめても成立はするんだな、というのが普段絵本に接する機会の少ない者にとっての新鮮な驚きでした。
作者が文章と絵の両方を担っているのであれば、その創作過程はなんとなく想像がつきます。
しかしこの作品のように担当が分かれている場合、絵本はどのように作られるのかちょっと興味がわきました。