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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

動物の超能力

小原秀雄 著
学習研究社 昭和49年6月20日初版発行
定価450円

動物の超能力
イラスト:浅渕紫歩

動物ぎらい
ジュニアチャンピオンコースの新刊として1974年6月に発売されました。「名探偵トリック作戦」「七つの世界の七不思議」という2冊が同時に刊行されているのですが、そちらにはあまり興味を持たなかったようです。
人間からしてみると超能力と思えるような力を持った動物はたくさんいます。この本ではコウモリが暗闇でも自由に飛べることや、逆さまにしたネコを高い所から落としてもきっちり着地できることなど、動物の様々な能力が豊富なイラストと共に数多く紹介されています。

全部で6つの章からなっていて「獲物をとらえろ!」という章ではイヌワシの眼の良さやホッキョクグマの嗅覚の鋭さ、「子どもを育てろ!」という章ではカンガルーの赤ちゃんが生まれた時は3cmくらいの大きさしかないことやホトトギスはウグイスの巣を乗っ取ることなどが書かれています。
世界びっくり情報」同様、情報量がかなり多いので、最後の「動物チャンピオン登場」と題された、長生きや大きさといったいろいろな分野でのナンバーワンを紹介する章あたりになると、やはり少し飽きてしまいました。

ちなみに背表紙にはこんなコピーが載っています。

理科ぎらい、動物ぎらいの子でも、これ1さつ読めば、きっと好きになれます。

そもそも動物嫌いの子はこの本を手に取らないでしょうし、誰かに買い与えられたとしても、最後まで楽しく読み通せるものなのかどうか。果たして「動物の超能力」を読んだことによって動物嫌いが解消されたという人はいたのでしょうか?


デンキウナギ
書かれている内容は専門的でかなり正確だと思われます。当時まことしやかに語られ広く信じられていた「ゾウの墓場」についても「まったくのうそ」であるとはっきり断言しているあたり、きちんとした情報を届けようという姿勢が見て取れます。元々動物が好きであれば、もっと好きになれる、そんな本だとは思います。

ただ、子どもの頃から懐疑的な目を向けていた記事もありました。
「馬を電気で直撃 デンキウナギ」というページには魚の調査でアマゾンへ行った高木三男という人が川を渡った時の体験談が載っています。

すると、現地人は近くから馬を五頭つれてきて、どっと川の中につき落としたのだ。馬はとたんにからだをふるわせ、高くいななき苦しみもがいて、次つぎに気絶してしまったではないか。

現地の人からは安全のために、あらかじめデンキウナギに電気を放出させてから川を渡るのだと説明されたそうです。
ピラニアが住んでいる川にヒトや動物が入ったところでたちまち骨にされてしまうようなことは滅多にないのと同じように、デンキウナギに感電するのもレアケースらしいという情報を既に持っていたので、体験談と言われても素直に「へえ」とはならず「わざわざそんな面倒臭いことするかなぁ」くらいに思っていました。大人的には、川を渡る度にいちいち5頭もの馬を気絶させるのは費用対効果が低過ぎると言いたくなります。
デンキウナギの実際のポテンシャルはいかほどのものなのだろうかとざっくり調べてみました。発電の仕組みや最高電圧が800ボルトといった情報は正確で、運が悪ければ人が死んでしまうこともあるようです。ただ、馬を囮にして川を渡るような方法があったのかどうかの確認はできませんでした。


ユリ・ゲラーぎらい
「動物の超能力」の出た1974年はスプーン曲げで有名な超能力者ユリ・ゲラーが来日するなど日本は超能力ブームに沸いていました。本のタイトルもブームにあやかってつけられたのだと思います。
自分にも超能力があるんじゃないかと、多くの小学生がスプーン曲げに挑戦しました。もちろん普通の子どもにそんな能力はありませんので、最終的には力づくで曲げようとします。その一番の犠牲となってしまったのが給食のスプーンでした。
普段家庭で使っているスプーンはそれなりに頑丈で、子どもが力を入れても簡単には曲げられません。なにより親に見つかれば速攻で怒られます。それに比べると給食の先割れスプーンは柔らかくて曲げやすい。当時の給食はお箸よりもスプーンで食べる機会の方が断然多かったので数も豊富です。
結果、配膳されるスプーンのほとんどが一度力づくという名前の超能力で曲げられたものとなってしまいました。取っ手の部分がぐにゃぐにゃと波打っているようなスプーンは1年以上出回っていて、隣の席の女の子は「ユリ・ゲラーは嫌い!曲がったスプーンを使わなくちゃならなくなったから」とブツブツ言っていました。

(2018.5.6更新)

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