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昔読んだ児童書をもう一度読んで感想文を書いてみる、個人の企画サイトです。

ゆかいなヘンリーくんシリーズ

クリアリー 作
松岡享子 訳
ダーリング 絵
学習研究社

ゆかいなヘンリーくんシリーズ
イラスト:杉本 早

シリーズ読破
アバラーのぼうけん」を読んだのは小学3年生の頃でした。
巻末では「ゆかいなヘンリーくんシリーズ」として「がんばれヘンリーくん」以下8タイトルが紹介されています。6年生の時に学校の図書室で懐かしさ(12歳にとって3年前は大昔)から手に取ったところその面白さに改めて気づき、シリーズを読破することになりました。

「がんばれヘンリーくん」には次のような紹介文が書かれています。

ヘンリーくんは小学三年生。どこにでもいるごくふつうの男の子です。ある日、町角でやせこけた犬を拾い、こっそりバスにのせて家までつれて帰ろうとしましたが、とちゅうで犬があばれだして大さわぎに……。それいらい、ヘンリーくんのまわりには、次つぎにゆかいな事件が起こります。アメリカの現代っ子の生活を生き生きと描いた楽しい物語。

シリーズには「アバラーのぼうけん」のように、ビーザスという女の子とその妹を描いた「ビーザスといたずらラモーナ」や「ラモーナは豆台風」といった、ヘンリーくんを取り巻くキャラクターをメインに据えた作品も含まれています。

「がんばれヘンリーくん」が出版されたのは1950年です。ノーマン・ロックウェルの描くような古き良きアメリカを背景に活躍するヘンリーくんが当時の自分にとって「現代っ子」と言えたのかどうかはともかく、大人になって読み返してみても古さはあまり感じられませんでした。時代や国境を越えて「あぁ、子どもってこうゆう考え方するよなぁ」と共感できる部分が多いためだと思います。


8年生
「がんばれヘンリーくん」には小柄なヘンリーくんがクリスマスの劇で幼い男の子を演じるはめになりそうなエピソードがあります。

学校じゅうの女の子の前に、パジャマをきて立てというのでしょうか? そして、おかあさん役をする、どこかのいかれた八年生(中学二年)の女の子に、キスしてもらえというのでしょうか? かんがえただけでも、ぞーっとします。

アメリカの学校が8年生まであることを知ったのはこの作品からでした。

話はそれるのですが2019年にイケてない中学生の女の子を主人公とした「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」というアメリカ映画を観ました。
大した予備知識もなく映画館に行ったため「エイス・グレード」というのは主人公の名前なんだろうと勝手に思っていたのですが、観ている内に8年生(8th Grade)だということに気がつきました。
後日あまりよく理解していなかったアメリカの学年制について調べてみて、日本の6・3・3制に対して5・3・4制か6・2・4制が主流であり、しかも高校までが義務教育だということを知りました。


キャベツ
コメディタッチでありながらアメリカの小学生の日常をリアルに描いている分、ところどころで文化の違いに気づかされます。
一番大きく感じられたのは小学生のヘンリーくんが近所のおじさんの魚釣り用のミミズを捕まえてお駄賃をもらったり、新聞配達のアルバイトをしたりすることでした。アメリカの子どもは日本の子どもよりもちょっと進んでいるような気がしたものです。

「ヘンリーくんとビーザス」という作品ではヘンリーくんの家にやってきたビーザスたちに驚いたことを覚えています。

ビーザスといもうとのラモーナは、めいめい、ここへくるまでしゃぶっていた、キャベツのしんをもっていました。でも、人前で、ものをたべるのはおぎょうぎがわるいので、いまはやめていました。

用事を済ませた姉妹はキャベツの芯を「ギシギシかみながら」帰っていきます。

幼い頃友達と「この草は食べられるんだよ」と言ってスカンポの茎の皮を剥いて口にしたことはあります。酸っぱいだけで、特に美味しいとは感じませんでした。
そんな経験がありながらも、キャベツの芯をしゃぶるという行為には少なからずショックを受けました。アメリカは日本よりも豊かだという漠然とした思いがあり、自分の家では捨てているようなものを口にしているのが奇異に映ったのでしょう。
あと、どう考えても生のキャベツの芯は青臭いだけで美味しそうには思えなかったということもあったと思います。

なにやら思いついたことを書き連ねるだけになってしまいましたが、今回通しで読み返したシリーズはとても楽しかったです。2007年に新装改訂版が出たということは今の小学生にも十分に面白い作品として受け入れられているからだと思います。

(2021.3.19更新)

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