珍しい野生動物を探し求める中、ハント一家は村の子どもがヒョウにさらわれる事件に遭遇します。救助に向かったハルはやむなくヒョウを殺してしまい、そのためにヒョウを守り神とする秘密結社から命を狙われることになってしまいました。
20人の男たちは、すべてヒョウの毛皮を着て、ヒョウの頭をかぶり、手の指から、ヒョウのつめに似せた鉄の曲がったつめを突きだし、足にはヒョウの足を結びつけていた。
ヒョウ結社というものは実在していたようで「歴ログ」というブログに簡単な解説が掲載されています。興味のある方は「世界の怪しい秘密結社の世界」という記事の中の「6. レオパード・ソサイアティ(西アフリカ)」という項目をご覧ください。
「毒じゃない。でも、毒とおなじように、人間を殺す力がある。このひげは、胃の中で消化されない。そのまま、胃壁に突きささり、炎症を起こし、腹膜炎の原因になる。
アフリカ人たちは、その病名を知らないが、ヒョウのヒゲを飲み込んで、しばらくたつと、恐ろしい苦しみかたをしながら死ぬことを、こころえている。」
食べ物に混ぜるとすれば、違和感なく飲み込める程度には刻まなければならないでしょう。ヒゲが消化されないということが本当だったとしても、口に入れた時に気づかれないサイズだと胃壁に刺さることなく、ほとんどがそのまま排泄されてしまう気がします。
仮に胃壁に刺さるものがあったとしてもヒゲそのものに毒性はないので、症状としては書かれている通り腹膜炎程度です。医療施設のない僻地であればそれがもとで死んでしまうこともあるかもしれませんが、ちゃんとした治療さえ受けられればお腹が痛い程度で終わってしまいそうです。
敵を確実に殺したいと思っている方にはあまりおすすめできない暗殺方法と言っていいでしょう。
大きなものは、体重が70キロぐらいあり、人間と一対一で戦える。そいつが2頭いれば、1頭のヒョウを、ズタズタに引き裂くことができる。
という記述は強く記憶に残っていました。
また同じ頃に親しんでいた望月三起也の漫画「ワイルド7」に凶暴なヒヒを周囲に放して囚人の脱走を防ぐ収容所というものが出てきたこともあって「ヒヒはヤバイ動物」というイメージが刷り込まれてしまいました。
一方ヒヒの高い知能を示すものとして、誤って毒を口にしてしまったヒヒの赤ん坊をハルが助けるエピソードも描かれています。大人のヒヒたちはハルが赤ん坊を助けようとしていることを察し、無事毒を吐かせることに成功すると母親は感謝を表すかのような目を向けてきました。
ハルとヒヒの間で繰り広げられた一連のやりとりは「人間同士であれば言葉が通じなくてもこの程度の意思疎通は可能かもしれない」という高レベルなものです。「ゴリラの逆襲」の感想文で書いたように、いくら知能が高いとはいえ野生の動物が初対面の人間に対してここまでフレンドリーになることはまずないでしょう。
校正といえばこのシリーズ、ハルと表記されるべきところがロジャーになってしまっているような誤字脱字が割と多いです。いつも行動を共にしている兄弟の名前があべこべになってしまうのは、まぁわからないでもありません。
ただ「スペイン帆船の秘宝」で「ハル」と書かれるべき部分が敵である「スキンク」になっているミスに気づいた時はさすがに笑ってしまいました。