その友人から借りてきた「記録なんでも日本一」は「トム=ソーヤーの冒険」や「猛獣いけどり作戦」と同じ少年少女講談社文庫の中の一冊です。人間の身長に始まり、動植物や建造物、スポーツの記録など当時の日本一がこれでもかと紹介されています。
以前感想文を書いた「世界びっくり情報」の日本版のようなものではあるものの、全体のイメージとしてはこちらの方が陰気な感じがします。
「世界びっくり情報」のイラストがコミック風で2色カラーが中心であるのに対し「記録なんでも日本一」のイラストはリアル路線でモノクロのみというのが最大の原因かもしれません。
小さい電子計算機
シャープが、一九七一年一月に発売した「エルシー8」は、たて十九センチ、よこ十七センチで日本最小。これをつかうと、八けたの割り算でも、二秒でできる!
エルシー8の価格は84,800円でした。今の大卒の初任給は1971年当時の4.6倍らしいので、単純にその比率で計算してみると現代の価格では390,000円となりました。企業かよほどの新し物好きでなければ手を出さなかったでしょう。
もっとも翌1972年には12,800円で発売されたカシオミニが大ヒットし、それから10年もしないうちに四則演算ができればそれで十分といったような電卓は子どものおこづかいでも買えるくらいになっていた記憶があります。
こうしたギャップを感じられる記事にぶつかると、当時の自分やクラスメイトたちにスマホを見せてその反応を見てみたくなります。
先に触れた通り「記録なんでも日本一」の挿絵はリアル寄りで、小学生にとっては恐ろしく感じられたりもしました。
「眠らない記録日本一」という項目に使われているイラストは血走った目をした男性のアップで、その絵を見たくないと女子が逃げ回っていた光景を覚えています。
「目が三つのおばけネコ」という記事も人気がありました。
人間にも、ときどき奇形児が生まれるが、横浜市中区新山下町のある倉庫にすみついていた野らネコは、目が三つで口が二つあるというおばけネコを産んだ。(後略)
これのどこが日本一なのだということはさておき、リアルな三つ目ネコのイラストにはぞっとさせられたものでした。
見世物小屋を覗くような、子どもの怖いもの見たさの欲求を満たしてくれる記事がこの本にはちょくちょく挟まれていて、そこが魅力でもあったと思います。
筆者のひとりである間羊太郎は他のペンネームで幅広く活動をしていました。
SF小説作家の式貴士、官能小説作家の蘭光生、どちらの作家の作品も読んだことがあったのですが間羊太郎と同一人物だったと知れたことが今回の最大の収穫でした。